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『涼ちゃん!うちのママが持ってる店で働いていいって!ヤッタねぇー』
こっちへ出てきて一番最初にできた友達は、私とは違って垢抜けたきらびやかな女性だった。
私より一つ年上のアケミは、途方に暮れて何日も時計台の下で大きなバックを持つ私に声をかけてきた。
『ねー、君かわいーね!私アケミ。最近ここいるよね?今日は雨降るみたいだから行くとこないならウチきなよ』
怖くなかったと言えば嘘になる。
でも都会の真ん中で一人過ごす夜はもっと怖かった。
田舎にいた時のように暗闇が私を包むわけじゃない。
朝まで賑わうこの時計台は、一人っきりになるわけじゃない。
でも、心は孤独だ。
孤独は怖い。
だから私はアケミに着いて行った。
アケミだってきっと怖かったと思う。
毎日毎日時計台の下でぼんやり座っている私を見ていたなら。
でも、世話好きのアケミは放っておけなかったんだと思う。
人に世話をして必要とされることが彼女の存在意義だったから。
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