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『…ちゃん!…涼ちゃんてばっ!』
アケミに声をかけれてハッとする。
『ちょっと~!少し目をつぶってた間に寝てたんじゃないでしょうねぇ~?』
『ゴメン、ゴメン。ちょっと昔の事思い出してて…』
『うわっ!涼ちゃんババ臭ッ!本当に私より年下なの~?昔の事ってなによー(笑)』
『アケミッ!ババ臭いってなによ!17歳の少女捕まえて!』
『そうね。見て。ちゃんと17歳の少女がいるでしょ?涼ちゃんは私みたいにケバケバしたのは嫌いだろうけど…。』
さっきまでこの部屋で異色を放っていた鏡の中の私は、アケミの手で女の子になっていた。
『ちょっとー!また泣くんだからぁ~。せっかくメイクしたんだから泣かないでよ~。これからはむやみに泣いたらパンダ目になるんだからね!わかった?』
『うん…ハイッ…。』
『全然わかってないじゃーん(笑)』
初めて鏡に写った女の子の私は、私が憧れていた清楚な女性ではなく、アケミ色に染められたケバケバしい姿だったけれど、アケミがかしてくれた金髪に近い明るい茶色いウィッグとメイクは、私に一瞬にして魔法をかけたようだった。
『それから、これはプレゼント。』
アケミが10代の私たちには見合わない、いかにも高級そうな紙袋を差し出しながら言った。
『開けて見て!』
袋には女性物のパンツスーツが入っていた。
『本当はね、かわいい服にしようか迷ったの。』
アケミは少しためらったあと続けて言った。
『涼ちゃんはまだ身体は男の子だから露出したくないかなと思った。でも、どうしても女の子の服買ってあげたかった。
今日は涼ちゃんの女の子誕生日にしたかったから…。
涼ちゃん、女の子の中では背は高い方だろうけど、背の高い子なんてたくさんいるから服もたくさんあったんだけど…パ…パンツスーツなら長く使えるし……ずっと…長く…私とも友達でいて欲しいし…』
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