痛み

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『涼ちゃん!うちのママが持ってる店で働いていいって!ヤッタねぇー』 アケミと暮らし出して半月くらいした頃、小柄なアケミがロングドレスの裾を上品とは言えない姿でまくりあげながら言った。 いつもはきちんと几帳面に揃えるヒールを脱ぎ捨てたまま、アケミは私に抱き着いた。 『涼ちゃん!自分で稼いでみたいって言ってたでしょ?』 『うん…それはそうだけど…』 私は保護者のいない身ではコンビニでさえ雇ってもらえず、アケミがアケミの店のママに保護者がわりになってもらえないか聞いて見てくれると言う返事を待っていた。 だから返事は『YES』『NO』のどちらかのハズだった。 『候補は二つあって…』 『ちょ…ちょっと待って』 『なぁに?』 アケミの親切心はわかる。 だがキャバクラで働いているアケミだ… そのママからの紹介となると… 『アケミ…気分を悪くしたらごめんなさい。私、水商売には興味ないわ…。その…もしオカマバーみたな所での接客なら私できない。』 住む所もとりあえずのお金さえもなくて、アケミの好意だけでその日暮らししている家出少女にも、くだらないプライドがあった。 『そっかー…そうだよねぇ。接客ではないけど…水商売ってジャンルにはなるのかなぁ…お店的にはそうだから。』 お金は必要。 女の子になるためにも、家を持つにも、ただ生きて行くだけでも。 それでも一度も苦労してコツコツ働いた事のない私が、お金の価値を知らないまま、価値がわからなくなるとアケミが言った世界に入るには、未熟だと思っていた。 『水商売のお店。けど給料低いからオススメじゃなかったんだ~。んじゃママに…』 『給料低いの?』 『うん。普通のバイトとかわんない。よそは知らないけど。だからよく人が辞めちゃうんだってー。』 給料が低いなら…と仕事内容を聞くと、ママが持ってるお店の調理場でのバイトだと言うことだった。 アケミがイチ押しだよと言った一つ目は、アケミの通うキャバクラだった。 アケミは一緒に働きたいと言ったが、男性の出で立ちの私と親しく働くことが、キャバ嬢であるアケミに影響するのではないかと思い断った。
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