1人が本棚に入れています
本棚に追加
ただいまと言う事が正しいのかどうかはわからなかったが、母のお帰りなさいと泣き続ける声に、ただいまと応えると、純に支えられながら私たちは家へ入った。
庭には純一家の家が建っていたが、私が産まれ育ったこの家は、この町と同じく時を止めたように変わらなかった。
嬉しくもあり、気が重くもなる。
私が逃げ出した場所。
高校二年の3月。
初恋だった先輩の卒業式の日、私はこの家を出た。
高瀬 涼 として。
最初のコメントを投稿しよう!