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それとなくナイフを置き、フォークを肉に突き刺すと肉をそのまま頬張った。
だが、視界の隅に写るメアリの動作が一瞬止まった事で悟られてしまったと気づく。
思わずそのメアリを見れば、置いたナイフを見つめるその顔に表情など乗せられていなかった。
時々盗み見るように、今みたいに冷静な観察者の目で俺の様子を伺っている。
出会った時…復讐が始まった時から。
最近その目が少しだけ揺らいでる気がするのは思い違いだろうか。
「おいしい?」
たった今見た表情は見間違いだったかと思うほどの穏やかな笑顔と馴染みの良い声でメアリは言った。
「うまいよ」
だから俺も出来るだけ優しい笑顔で答える。
「よかった。ジン好きそうだと思って」
そんな笑顔が堪らなく好きだった。
メアリがくれる優しさはいつも温かい。
これ以上の幸せなんて他には無いと心から思う。
例え、その全てが偽物だとしても
例え、突き落とすだけの手段だとしても
これ以上の幸せなど、彼女に出会わなければ生涯知り得なかっただろう。
だから
望まれるなら、いくら殺されても良いと思う。
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