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「おいしい?」
おいしい。とジンは言ったけど、殆ど料理に手を着けなかった。
「悪いな残しちまって…昼食が遅かったからさ」
すっかり痩せすぎてしまった身体。
もう食べ物を受け付けなくなってしまったんだろう。
“もう”料理には何も入っていないとゆうのに…少しずつ入れてきたあの毒薬が身体中を蝕んで。
その先はもう…私の思い描いた通りに…
ジンはもうすぐ、死ぬんだろう。
喜べなくなった私がいた。
ジンの瞳の中には、憎しみと愛憎が重なって、無理な笑顔を張り付けたまま動けなくなった私がいた。
どうしても、この手がこれ以上の毒を盛る為に動かなくなってしまった。
いっそ、憎くて仕方なかったあの頃に、一思いに殺してしまえばよかった。
生かすことも殺すこともできなくなった。
痩けてしまった彼の頬を撫でれば、その琥珀色の瞳を優しく細める。
顔をみられたくなくて、胸に顔を埋めた。
温かい日差しのような心地よさだった。
この男が憎くてしかたないのに
それ以上に愛していたと。
「メアリ…愛してるよ」
「私も愛してるよ…ジン」
時が止まれば良いと愚かに願った。
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