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ある雨の日だった。
雨上がりが好きだとジンは言った。
あれから、殆どベッドが動く事すらできなくなってしまった体で、懐かしむように雨が止むのを待っていた。
「もう寝ましょうよ。しばらく雨は止みそうにないわ」
メアリがそう促しても、なかなか窓から離れようとはしなかった。
「なぁメアリ、水くれるか?」
「…待ってて。すぐ持ってくるから」
キッチンから戻ったメアリは声を失った。
視界が一気に灰色に薄らいでく中で、床に倒れたジンのの吐血だけが、鮮烈にまがまがしい赤だった。
ベッドの上でそっと目を開けたジンを見た時、こんなにも安堵したとゆうのに。
「やっぱり病院に…」
「いや、いい」
「でも…」
「大丈夫、だ」
虚ろなジンの表情は薄れゆく意識の中でも確かに笑った。
メアリは耐えきれず、ジンを抱きしめていた。
苦しいだろう事は分かっていても、力を緩めてやれなかった。
「…ごめんなメア、リ……もうじき死ねる…から」
「…何」
「楽に…して、やるよ」
ジンがとても恐ろしい事を口にするような気がした。
「ごめんな…俺は、幸せ…だった…お前に会えて幸せ…だった…」
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