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程なくしてメガネをかけた若い医者とナータがどかどかと家に入り込んできた。
医者はびしょ濡れのセラをちらりと見て顔を歪めた。
「長老はいつから倒れたんだい?」
「あ、あたしが日の出に帰ってきた頃には倒れていました、お医者様」
「どうして長老に付いていなかったんだ?」
「そ、それは…」
医者はため息を付くと素早く長老の額と首に手を当て、顔をしかめた。
―そうだ、どうしてあたしは星が丘何かに行ってしまったのかしら。おじいちゃんは元から体が悪かったのに。
セラは唇をかみしめた。
「早く水を用意しなさい!あと濡れたタオル!それと君」
「はっ、はい!」
落ち込んでいたセラは飛び上がった。
「君は長老に付いてやってくれ。さっきから苦しそうに君の名を呼んでいる」
セラは慌てて長老のそばに跪くようにして、顔を近づけた。
「おじいちゃん?おじいちゃん?」
「セラ…セラや………行ってはならん、行ってはならんのだ」
「おじいちゃん、あたしはここにいるわよ!もうどこにも行かないから!」
ナータがいつの間にか長老の額にタオルをおいていた。
医者は薬を取り出し、ナータが汲んできた水の中に溶かしだした。
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