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とある話をしようか。
昔々、あるところに一寸と例え馬鹿にされるほどの、小さい法師が居た。
見た目こそ小さいが、中身はとんだやんちゃものでのぅ。
確か奴はまだ15じゃったが、その暴れっぷりは大変なもんでな。
気に入らんものには暴力をふるい、人のものを勝手に盗んだり。
何十年何百年と生きてきた儂にすらそれは困ったもんじゃった。
それが、どうしたものか、誰も手に負えんくてな。
遂に、村の神様に助けを乞うた。
村の神様、《お天道様》は善き方だ。
いつも村を照らし、寒さから儂らを助けて下さる。
そして、いつも儂らを愛し、見守って下さる母なのだ。
朝日が登ると同時に、儂らはお天道様に頭を下げて願った。
奴を、奴をどうか鎮めて下さいと。
その儀式は寛大に行われた。
沢山の団子を添え、和太鼓やら笛やら琴やら、皆が集まって歌を歌い踊り、お天道様に捧げ。
やがて雨雲は一切もなく、お天道様は現れた。
輝かしい光を照らしながら、片肘を地につき上から儂らを眺めるかのように。
「お前たちの願いは届いた。悪戯を働く小童に、暫しの戒めをやろう。
なぁに、根っからの悪い奴ではない。奴が己に欠けているものに気付くまでの間だけ懲らしめるとしよう。」
お天道様はそう言って奴の元へ足を運んだ。
荒れ狂う法師は、そんな事も知らず盗んだ柿を頬張っておったのじゃ。
「法師よ、その柿は一体誰のものだ?」
法師はむしゃむしゃと音を立てながら柿を頬張り、ちらりとお天道様に目をやると眉間に皺を寄せてぷい、と顔を逸らしてもぅた。
「しらを切るつもりか?全く、困った小童だ。」
「うぜぇな!!つっかかんじゃねーよ
っつーか小童じゃねぇし!!」
「うむ、このままでは埒があかんな。お前、暫く小さくなるといい。
己が心の器を大きくすればする程、また背丈もでかくなるように。心身の成長を心得るのだ。」
お天道様がそう言うと、瞬く間に奴の身体は小さくなった。
それはもう、屈んで話をかけなければならないほどにのぅ。
更に法師は少し離れた場所へ飛ばされてもうた。
「お前が成長するに相応しい場所へ届けてやる。
そこで出会ったもの達と、お前は変わっていくのだ。
さぁ行ってこい。今こそ、変わる時がきた。」
これが、荒れ暮れ法師と呼ばれた奴が変わる、初めの出来事じゃった。
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