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 その三日後、恒一の葬儀がしめやかに行われた。恒一の父親はすでに二年前に胃がんで亡くなっていたので喪主は恒一の母親だった。  当然のことながら健二と加奈たちのグループは葬儀の手伝いをした。受付から弔問客への料理の手配、その他の段取り等、恒一の母親が手配した葬儀屋と交渉して滞りなく終わらせることが出来た。  医師から聞いた話だと死因は頭がい骨強打による脳内出血とのことだった。確かに健二はちらりとではあったが事故の直後に線路が真っ赤に染まっているのを目撃していた。  そしてそのイメージは健二の心の中から拭おうとしても拭いきれないだけのインパクトがあった。  自殺とはいえ恒一の死に方が普通ではなかったので警察はそれなりに調べていた。  健二も警察から任意で聴取を受けた。当日恒一が持っていたバッグから見つかった遺書らしいメモも警察で見せてもらった。 「そんな…」  それを見た瞬間、健二の体は凍りついた。そこには恒一の鬼気迫る心の内側が吐露されていたのだ。 「目の前で好きな女が他人のものになるのを見せられるのは地獄だ。俺はこの世の地獄よりも天国を選ぶ」  やはり恒一は加奈のことを諦めきれていなかったのだ。だから健二と加奈が箱根に行くまさにその時間帯に二人がいるであろう小田急線のホームで自殺して見せたのだ。  健二にとって恒一は無二の親友だった。その親友の恒一がまさかここまで自分に対して恨みがましい行動を起こしたのは健二が今までの人生でかつてない程の衝撃だった。  その深い傷にもがき苦しんでいる最中の恒一の葬儀だった。理紗を中心にテキパキと動く女性陣だったが健二は二、三度ぼけっとすることがあった。しかし健二は自分に鞭打って葬儀を手伝った。 「野呂さんにはお世話になったわねえ」  恒一が火葬され斎場から一同が帰る時に恒一の母親は健二に感謝の言葉をかけた。 「いいえ。生前山田さんからお世話になったのは私の方です」 「恒一にはそんな度量はないわよ」  母親は苦笑した。健二はそこで会話が終わったと思い母親から離れようと思った。
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