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 恒一の葬儀のあった翌日の朝、健二は恒一の夢で目が覚めた。  夢の中で恒一は黙って健二を恨みがましい目で睨んでいた。健二はそれには耐えきれず近づいて恒一に詫びを入れようと思った。だが健二は体を動かすことも声を出すことも出来なかった。焦っても焦っても健二には何も出来なかった。 「お前を一生許さない。お前とキムカナを幸せにはさせない」  低く無機質な声が恒一から発せられると健二は地獄に落ちていくような絶望的な気持ちに襲われた。 「はぁはぁはぁ…」  健二が目を覚ますと全身からぐっしょりと汗をかいていた。 …やっぱり山田は俺のことを許してくれないんだ。  その夢を見てから健二にはそれまであった恒一に対する罪悪感に加え、このままいくと加奈が自分のせいで不幸になるのではないかという恐怖心が植えつけられてしまった。  その日は幸いにも土曜日だったので会社はなかったがその日を境に健二は精神が不安定になっていった。夜は夢を見るのが怖くなり寝つきが悪くなった。睡眠不足は更に悪循環を起し昼間でももやもやした感じがした。これでは仕事にならないと思い、健二は翌週は月曜から金曜まで一週間の有給休暇をとることにした。  健二は加奈に対しても全く連絡を取らなくなり、健二の携帯へは加奈からの電話やメールの受信や着信が次々と入っていったのでどんどん溜まっていった。それでも健二は全くそれに応じる気力がなかった。 「健二さん。どうしていますか?今すぐ会えませんか?悲しみを一緒に乗り越えましょう」  そんな加奈からのメールを見たのは一回きりだった。 …加奈とこのまま結ばれるのは恒一に対して不誠実過ぎる。それにこのまま加奈と結ばれたとしても果たして幸せになれるのだろうか? …いわば僕と加奈は山田に呪われたのだ。このまま二人でいると良くないことが起こるのではないだろうか?最初から山田という暗雲が頭上にあるのにそれを無視して付き合ってみすみす二人共に不幸になるべきではないのではないだろうか? …僕は加奈を不幸にすることは出来ない。山田の霊を弔う意味でも加奈を不幸にしないという意味でも別れるべきなのではないのだろうか?  健二はそう考えた。もちろん健二は加奈を強く愛している。だからこそ加奈とは別れるべきではないかと思えるのだった。
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