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 健二はバスと電車を使って来たのと同じルートで青森駅へ戻ることになった。その間手持ちぶさたから携帯の電源を入れて着信メールをチェックしてみる。やはり加奈からのメールが多かった。すでに古いものは削除してあったがここ二、三日で増えている。  ここで健二はあることに気が付いた。前日の朝の別れ以来加奈からのメールはパッタりと途絶えている。それはあの朝、加奈の健二に対する気持ちの変化を意味していた。  ある意味健二の思い通りだったのだがやはりとても寂しくもあった。    一番最新の受信メールは理紗からのものだった。前日の昼休みの時間となっている。何気なく内容を読んでみる。 …野呂さん。今どこにいるの?加奈が大変よ。今度の日曜日、午前十時に両親の紹介で神宮の明治記念館でお見合いだって。相手は地元の名士の息子さんだって。会うだけじゃ済まないわ。  健二は動揺した。日曜日は二日後ではないか。ただ健二は慌てて帰る気は毛頭なかった。青森駅に夕方到着すると前日と同じビジネスホテルにチェックインした。 「どうです?青森はいいでしょう?」  フロントのボーイが訊いて来る。もう健二にとっても顔馴染みになっている男だ。 「そうですね。ただ、まだあまり観ていないんですよ。いい場所があったら教えて下さい」  健二が訊いてみると、 「それなら十和田湖なんてのはどうですか?割りと近くですけど」 「いいですね。ついでに奥入瀬も観てこようかなあ」 「それがいいと思いますよ。十和田湖を遊覧船で一周してそれから奥入瀬をちょこっと見て回る。きっと心が洗われますよ」  フロント係のボーイはそう言うとにっこりとほほ笑んだ。健二はこの旅行の収穫がかなりのものであることを認識した。
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