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 日曜日の明治記念館。時間は午前九時四十分を回ったところ。すでに加奈とその両親は仲人の栗山修二と共にテーブルに着いていた。  初老の栗山は加奈の父健策の上司で口髭とスキンヘッドが板垣退助みたいな威厳を醸し出している。栗原と加奈は常に冷静だったが加奈の両親二人はきょろきょろと落ち着きがなかった。  彼らと午前十時に待ち合わせをしているのは香城義純という二十九歳の市役所勤務。その父親は広大な土地を持っている地元の名士香城慎一郎である。  加奈の両親にはある種の自信があった。 …自分の娘は学歴も短大を出ているし容姿も気立ても並み以上だ。必ず先方は娘を気に入るだろう。二人が結ばれれば大船に乗ったも同然だ。 「はじめまして」  それから十分も経たないうちに彼らのテーブルにやって来たのはいかにも貫録のある地元の名士、香城慎一郎だ。身長か゛一メートル八十ぐらいあるだけでなく顔つきにも威厳がある。見るとその背後にはその妻恵理子と息子義純がいた。二人ともにこやかで気品のある笑みを浮かべているが義純も背が高く体つきもがっしりとしている。 「はじめまして…宜しくお願いいたします」  加奈の両親も深々と頭を下げた。加奈が義純の方を見ると義純がにっこりと笑みを見せた。眉毛がくっきりと太く精悍さが溢れ出るような顔立ちだ。…健二さんとは全くの別タイプだわ、加奈は思った。  その後で栗原の進行のもと見合いは進められていった。お互いの学歴と現在の仕事内容、趣味と現在の関心事に至るまで二人の情報は交換されていった。  栗原の仕事は地元千葉の某所の市役所で都市の再開発を企画・推進していくというものだった。 「地元の住人や業者たちとの交渉、割と得意なんですよね。大学時代にアメフトで培ったとことん押して行く戦法が功を奏しているようで」 「義純さんって今どきの『草食系男子』とは違って頼りがいがありそうですものね」  加奈の母親は始めから義純が気に入ったようだ。彼を見る目が何かうっとりとしている。 「いやあ、それほどでも。『猛獣系』とはよく言われますけどね」  義純が言うと一同は大笑いした。それと同時に頭をかきながら冗談を飛ばす義純に一同は敬服した。義純には自信に満ちたある種のオーラのようなものが備わっていた。
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