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 お見合いもたけなわとなった頃に栗原が提案した。 「どうですかな?ご両人の親睦をより高めるためにも二人っきりで庭の散歩をしてみては?」 「そうしましょうか。木村さん、行きましょう」 「はい」  加奈は義純の誘いに迷いなく同意した。二人は立ち上がり広い庭園へと出て行った。  手入れが良く行き届いた庭園にはきれいな花々が咲き乱れて大きな池には鯉が泳いでいる。 「木村さん」 「はい」  しばらくすると義純が池の畔で立ち止まり改まった口調で切り出してきた。 「正直言っちゃうと木村さん。君って僕のズバリ、ストライクゾーンなんだな。一目惚れって感じ。どうでしょう?このまま付き合ってもらえないでしょうか?」 「はあ」  義純のストレートな言い方に圧倒されながらも加奈は思案した。最早健二とは終わっている。本人からはっきり言われてしまったのだからどうしようもない。健二のことを忘れる意味でも取り敢えずお付き合いするのも悪くないのではないだろうか?  加奈はそれから更に思案し続けた。三分間くらい沈黙が続いた。 「どうでしょう?それとも誰か好きな方でもいらっしゃるのですか?」  その義純の言葉が加奈のもやもやした気持ちに刺激を与えた。加奈は堰を切ったように話し始めた。 「あの…なんと申しましょう。わたし…少し前まで付き合っていた人がいたんですけど別れてしまったんです。彼の方から『別れよう』って言われてしまって。それで…まだそれを引きずっていることも確かです。でも…今決めました。お付き合いさせて下さい。よろしくお願いします」  義純は少し驚いたようだった。それでも笑みを見せると、 「いやあ、君とそんなタイミングで出会ってしまうなんて単なる偶然ではないかも知れませんね。何か縁を感じてしまうくらいだ。とにかくこちらこそよろしくお願いします」  二人は固く握手した。  二人はそれからしばらく庭園を散歩してお互いの休日の過ごし方を語り合った。義純が最近ハマっているのが川の急流を数名でボートに乗りながら下って行くラフティングだということも判った。 「絶対気に入ると思いますよ。今度お連れしますけどどうですか?」  義純が言ってくるので、 「はい。よろしくお願いいたします」  と加奈は誘いを受けることにした。
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