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 加奈は義純が話せば話すほど好青年であることが判って来た。何だか彼と話していると悩みが吹っ飛んでしまいそうな気さえする。 …これでいいんだ。わたしはきっとこの人とお付き合いして結婚するんだ。経済的にも恵まれ包容力のある夫にしっかりと引っ張って行ってもらう。そのうち子供も生まれるだろう。子供たちも頼りがいのある父親を見ながらすくすくと成長していくことだろう。  加奈はそう思うと自分が今得ようとしている幸せを想像しそれに満足しようと試みた。  それでも加奈には何か物足りないものがあるような気もした。それが何なのかすぐには浮かばなかった。ふと加奈が思ったのはそういう感覚は以前加奈が量販店である電化製品を買った時に感じたものと同じかも知れない…ということだった。 …予めカタログで見て気に入ったものを店に行って買おうとする。しかしそれと同じものが見つからない。店員に訊くと、 「ああ、それは当店にはおいておりません。だけど同じようなものがあります。内容はほぼ同じです。ただメーカーが違うだけです。むしろこちらの方が頑丈に出来ていて壊れ難いからお得ですよ。事実、こちらも人気商品なんですから」  店員にそう言われて「それもそうだな」と思って店員に勧められるがままにその商品を買ってしまう。だけど家に帰って買ったものを使ってみると何か面白くない。特にデザインが気に入らない。やはり最初にパンフレットを見て「いいな」と思った方がいいものに思えてくる。  でも…、と加奈は考える。そういう場合でも買った直後は落胆しても次第に買ったものに愛着が湧いて来るものなのだ。加奈は時間さえ経てばきっとこの義純という青年が自分にとっての良き主人になってくるのではないか…。  加奈はそう思い込もうとした。 「木村さん」  不意に義純が加奈に声をかけた。  加奈は少しびっくりしながらも「はい」と答えた。 「今日自動車で来ているんですけどドライブして夕食までご一緒出来ませんか?」 「えっ…」  突然の申し出に加奈はどぎまぎした。
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