―第三話―

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【主劇・あやめ】 あやめ「………」 私は珍しく、それはもう、病気なのに?と思うほど、頭を使っていた。 …あの、お医者様について考えていた。 ――数十分前 あやめ「…ありがとうございます。」 お調べが終わって、私は陵安先生にお礼を言った。 陵安「死に至るようなものではないですね。ただ、何かの菌に感染してるみたいです。」 あやめ「菌…ですか。ウィルスとか…」 陵安「そうですね。ただの菌ならいいのですが、あやめさんの場合、持病の喘息もあるようですし、無理だけはいけません。今日はこの薬だけ渡しておくので、朝晩の二回、お飲みになってください。」 そして私は紙に包まれた粉末の薬を渡された。 あやめ「ありがとうございます。」 陵安「私は、ご容態のことを旦那様にお伝えして参ります。」 あやめ「はい…。ご苦労様です。」 だ、旦那様かぁ…。 ……ん? 待って。 あの人なんて言った? 陵安「暖かくして、ゆっくりしていてください。」 あやめ「は、はい…。」 陵安先生が部屋を出る寸前、私はたまらなくなって思わず呼び止めてしまった。 あやめ「ちょっと待って…!」 陵安「はい。」 あやめ「……」 落ち着いて。息を整えて、私は言った。 あやめ「…ウィルスって、なんですか…?」 陵安「ウィルス…?あぁ、体の中にある、病気のもとですよ。」 あやめ「そうじゃなくて。…どうして、ウィルスって分かるの?」 陵安「……!」 先生の顔が明らかに変わった。だけど、すぐに笑顔になって 陵安「わかるも何も、私は医者ですから。…また明日来ます。」 そのまま私が引き留める間もなく先生は部屋を出てしまった。 ――…今の世に、 “ウィルス”なんて言葉があるかしら。 もし、無いとしたら? あの人は、 陵安先生はどうして知っているのだろう。 …誰かに教わった? つまり、私以外の人で――… 未来の、人が―?
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