87人が本棚に入れています
本棚に追加
【主劇・あやめ】
あやめ「………」
私は珍しく、それはもう、病気なのに?と思うほど、頭を使っていた。
…あの、お医者様について考えていた。
――数十分前
あやめ「…ありがとうございます。」
お調べが終わって、私は陵安先生にお礼を言った。
陵安「死に至るようなものではないですね。ただ、何かの菌に感染してるみたいです。」
あやめ「菌…ですか。ウィルスとか…」
陵安「そうですね。ただの菌ならいいのですが、あやめさんの場合、持病の喘息もあるようですし、無理だけはいけません。今日はこの薬だけ渡しておくので、朝晩の二回、お飲みになってください。」
そして私は紙に包まれた粉末の薬を渡された。
あやめ「ありがとうございます。」
陵安「私は、ご容態のことを旦那様にお伝えして参ります。」
あやめ「はい…。ご苦労様です。」
だ、旦那様かぁ…。
……ん?
待って。
あの人なんて言った?
陵安「暖かくして、ゆっくりしていてください。」
あやめ「は、はい…。」
陵安先生が部屋を出る寸前、私はたまらなくなって思わず呼び止めてしまった。
あやめ「ちょっと待って…!」
陵安「はい。」
あやめ「……」
落ち着いて。息を整えて、私は言った。
あやめ「…ウィルスって、なんですか…?」
陵安「ウィルス…?あぁ、体の中にある、病気のもとですよ。」
あやめ「そうじゃなくて。…どうして、ウィルスって分かるの?」
陵安「……!」
先生の顔が明らかに変わった。だけど、すぐに笑顔になって
陵安「わかるも何も、私は医者ですから。…また明日来ます。」
そのまま私が引き留める間もなく先生は部屋を出てしまった。
――…今の世に、
“ウィルス”なんて言葉があるかしら。
もし、無いとしたら?
あの人は、
陵安先生はどうして知っているのだろう。
…誰かに教わった?
つまり、私以外の人で――…
未来の、人が―?
最初のコメントを投稿しよう!