―第四話―

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あやめ「先生は、薩摩のお生まれですか?」 陵安「私ですか?いえ、私は江戸の方から参りまして。こちらに来てもう五年と半年になります。」 あやめ「五年にも?長いんですね。」 陵安「まぁ…」 私はここで少し、鎌をかけてみることにした。 あやめ「五年もいたら、さぞかしいろんなことがあったでしょう?何か印象に残ってる出来事とかあります?」 陵安「印象に残ってる出来事…?そうですねぇ。一度、診察所が小火騒ぎにあったことかな。」 あやめ「それは大変ですね…。何年くらいに?」 陵安「さぁ…もう、三年は前になるかな。」 あやめ「そうなんですかー。」 …掛からなかったな。 何年って聞いて西暦が出てきたら確実だったけど… 陵安「では、私はこれで。」 あやめ「ご、ご苦労様ですぅ。」 すっと襖が閉まって、私はため息をついた。 あやめ「はぁ…」 利通「…なんだ、小娘。気まで病にかかったか。」 入れ替わるように大久保さんが部屋を訪れた。 あやめ「大久保さんっ?どうしたんですか?」 利通「見…見舞いに来てはいけないか。」 あぁ、お見舞いかぁ。 てか、お見舞いなんてしてくれるんだ。 あやめ「ありがとうございます。」 利通「…礼には及ばん。」 あっ、顔が赤い。 大久保さんは顔を隠すように続けてこう言った。 利通「今日、坂本君はいるか?」 あやめ「え…龍馬さん?たしか、自分の部屋にいたと思いますけど。」 利通「そうか…邪魔をしたな。」 踵を返した大久保さん。 あやめ「えっ、もう行っちゃうんですか?」 少し残念な気がする。 利通「…なんだ、私に側にいてほしいのか?」 あやめ「なっ…!ち、違いますっ!」 利通「お前には旦那がいるだろう。私なんぞに頼るな。」 そう言って大久保さんは襖を閉じた。 …また、小娘って言った。
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