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あやめ「――…戦って…」
慎太郎「闘いです。」
……歴史の知らない私でも分かる。
『戊辰戦争』
旧幕府軍と新政府軍とのもっとも大きな闘い。
あやめ「…慎太さんも、行くの…?」
慎太郎「ぇ…。」
あやめ「慎太さんも、戦うのっ?私、嫌だよ!…ごほっ、ごほっ!」
慎太郎「あやめさん、落ち着いてっ!」
ひーひーと喉を細く鳴らす私の背中を慎太さんはさすってくれる。
慎太郎「落ち着いて!俺は行きませんからっ…!」
あやめ「…へっ」
慎太郎「それに、俺は実際どちらとも関係ありませんから。」
あやめ「あっ……そうなんだ。…よかったぁ。」
慎太さんが…死なないから。
慎太郎「あやめさん…本題はここからです。」
あやめ「…はい。」
慎太郎「恐らく、旧幕府軍は手も足も出ない。」
あやめ「つまり…?」
慎太郎「…江戸へ行きます。」
!!?
あやめ「じゃぁ…薩摩を出るの?」
慎太郎「はい。恐らく、新政府軍は江戸を目指します。徳川を落とすため。その前に、俺たちが江戸で西郷さんたちを説得します。…戦いをやめるように。」
あやめ「…そっか。」
―…薩摩を出る。
それは、とても合理的な結果だと思う。
でも……
慎太郎「…あやめさん?」
あやめ「……慎太さん、私、ひとつだけ…ここで確かめたいことがある。」
慎太郎「確かめたいこと?」
私が確かめたいこと。
それは、
陵安先生のこと。
ずっと言うかどうか迷ってた。
…勘違いかもしれないし。
あやめ「…もしかしたら、陵安先生が未来の人かもしれないの。」
慎太郎「……未来の?」
あやめ「…まだ推測だけど。」
慎太郎「…確かめて、どうするんすか?」
あやめ「えっ?」
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