―第五話―

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――…翌日の正午。 今日も私は陵安先生の診察を受けていた。 陵安「今日も何か変わったことはありませんか?」 あやめ「はい。お陰さまで。」 体調は良好。熱は薬のお陰で下がっている。 陵安「…おや。」 あやめ「はいっ?」 陵安さんの手が止まった。そして私の首もとに手を伸ばしてきた。 あやめ「え、あ、ちょっと?」 陵安「…傷になってますね。」 き、傷? 私は首もとをさわってみた。 そういえば、蚊に刺されたところ掻きむしっちゃったんだ。 あやめ「あぁ、これ蚊に…」 陵安「掻いちゃダメですよ。いずれひどくなってしまう。」 あやめ「…は、はぁ。」 なんか、少し大袈裟じゃない? 蚊ぐらいで。 あやめ「…気をつけます。」 陵安「…絶対掻いちゃダメですよ。いいですね。」 あやめ「…はい」 よろしい、と陵安先生は道具を片付け始めた。 もう帰るらしい。 あやめ「……」 …今日中に、けりをつけようかしら。 陵安「それでは、失礼します。」 あやめ「ちょっと、よろしいですか?」 陵安「…は。」 あやめ「…お話を、したいんです。」 私はまっすぐ陵安先生の目を見つめる。 あやめ「よろしいですか?」 陵安「…はい。」 陵安先生は拒むことはせず、笑顔で答えてくれた。 そして、私の枕元に座ると話は始まった。
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