87人が本棚に入れています
本棚に追加
あやめ「――…え?」
陵安「私は未来の人間なんかじゃないよ。普通の医者だ。」
―待って。
あやめ「…嘘でしょ?」
陵安「いいえ。」
――待ってよ。待って。
陵安「……私は江戸生まれの、しがない医者です。」
そんな。じゃあ、何で…
あやめ「何で、ウィルスなんて知ってたんですか?」
陵安「……私が知っているはずがないと、そうお思いなのですね。」
あやめ「…だって、その言葉が今あるはずがないわ。」
陵安先生は真顔で次の言葉をこう続けた。
陵安「私の父が未来の人間でした。」
あやめ「お父様が…?」
陵安「はい。医師をしていたようです。」
今はすでに他界しているけれど、と、悲しそうにうつむいた。
陵安「……僕はただ、父の教えを受けただけです。」
父は――…
【薩摩藩・北崎陵安】
―…三十八年前
当時、まだ五つだった私は江戸にいました。
町人「…てめぇ、まだこの町にいたのか?とっとと失せろって言ってんだろ!」
ガシッ
???「うっ…!」
僕の目の前で一人の男の人が蹴倒された。
町人「おら、失せろっ!」
バタン、と激しく戸口を閉めた町人を僕は激しくにらんだ。
???「こらっ、やめなさい。」
だけどすぐにやめさせられた。
最初のコメントを投稿しよう!