―第六話―

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あやめ「――…え?」 陵安「私は未来の人間なんかじゃないよ。普通の医者だ。」 ―待って。 あやめ「…嘘でしょ?」 陵安「いいえ。」 ――待ってよ。待って。 陵安「……私は江戸生まれの、しがない医者です。」 そんな。じゃあ、何で… あやめ「何で、ウィルスなんて知ってたんですか?」 陵安「……私が知っているはずがないと、そうお思いなのですね。」 あやめ「…だって、その言葉が今あるはずがないわ。」 陵安先生は真顔で次の言葉をこう続けた。 陵安「私の父が未来の人間でした。」 あやめ「お父様が…?」 陵安「はい。医師をしていたようです。」 今はすでに他界しているけれど、と、悲しそうにうつむいた。 陵安「……僕はただ、父の教えを受けただけです。」 父は――… 【薩摩藩・北崎陵安】 ―…三十八年前 当時、まだ五つだった私は江戸にいました。 町人「…てめぇ、まだこの町にいたのか?とっとと失せろって言ってんだろ!」 ガシッ ???「うっ…!」 僕の目の前で一人の男の人が蹴倒された。 町人「おら、失せろっ!」 バタン、と激しく戸口を閉めた町人を僕は激しくにらんだ。 ???「こらっ、やめなさい。」 だけどすぐにやめさせられた。
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