―第六話―

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康長「…こら、千代っ!」 千代「すみません。」 そう言いながらも千代は舌を少し出して笑っている。 陵安「ただいま戻りましたっ!母上、父上!」 丁度陵安が帰ってきた。桶にいっぱいの水をいれて。 千代「ありがとう、陵安。」 …はぁ、まったく。 千代は自分の病気の深刻さをわかっていないのか? 緑膿菌は傷口から侵入してそこから緑の膿を出す。 千代の場合、馬に蹴られた腕の傷から侵入したと考えられる。これはひどくなればやがて死に至る。 ……私ではどうにもならない。平成の世にしかないのだ、薬が。 陵安「母上、今日は何が食べたいですかっ?」 千代「ん~、そうね、陵安は何が食べたい?」 そんな他愛もない会話を聞きながら、私の顔には自然と笑みがこぼれていた。
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