―第一話―

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【土佐藩・中岡慎太郎】 慎太郎「ふぁあ…。」 暇だなぁ… 傷はもう大分癒えたから、動けないわけではないんだけどな… 龍馬「…のぉ、中岡。」 慎太郎「何ですか。」 龍馬「ちくと考えたんじゃが、暇じゃろ?ほじゃけぇ、町に行って…」 慎太郎「みません。ダメです。」 龍馬「な、なんじゃい。堅物じゃの。」 ………… だって、あやめさんの言い付けだから。 あやめさんが一緒に置いていってくれたお茶をすする。 龍馬「…のぉ、中岡。」 慎太郎「ダメですってば。」 龍馬「祝言、いつあげるかのぉ。」 ブッ!! 慎太郎「ゴホッ、ゴホッ!」 龍馬「お、おい、どうしたがじゃ?」 …ど、どうしたじゃないです! 慎太郎「はぁ…何ですか、いきなり?」 龍馬「いきなりじゃないき。もう一ヶ月もあのまんまじゃろ?考えちょらんのか?」 慎太郎「……か、考えてますよ。」 龍馬「ならなんですぐに挙げんがじゃ?」 慎太郎「そ、それは…その……」 龍馬「ん?」 龍馬さんの追求してくる目がいたい。 俺は思わずうつむく。 ……俺だって、挙げたい。 すぐにだって挙げて、正式な夫婦になりたいっす。 でも…… 慎太郎「……まだ。」 龍馬「ん?」 慎太郎「…心の準備が、まだなんす。」 龍馬「……は?」 キョトンとした顔をされてしまう。 あぁ、自分で自分が情けない。顔が赤いのが自分でもわかる。 龍馬「ふ~ん…」 慎太郎「…だから、時間が欲しいっす。」 龍馬「ほぉか、ほぉなんか……。よし。それなら、おんしらが決めたらいいきに。ゆっくり決め。」 慎太郎「龍馬さん…あ、ありがとうございます。」 龍馬「ほいでも、早いに越したことはないぜよ。」 慎太郎「…もう。」 どっちなんすか? 半ば龍馬さんにあきれながら、もう一口お茶をすすった。
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