幼きルイの思い出

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『ルイ…次の休みに、お客様が来る。 空けておくように…』 数日前の夕食時に、父上が突然そう伝えてきた。 現在、そのお客様が来られるのを待っている。 でも誰かな? 父上は母が亡くなってからは、家にお客様を招いたりはしなくなった。 生前は母がハーブ作りを趣味にしていたから、そのハーブを使った手料理やハーブティーを振る舞う楽しみで、よくお客様を招いて楽しんでいた。 母はそれだけでなく、使用人にも振る舞い気軽にお喋りをする、明るく優しい人でした。 …そう言えば。 最近、母のハーブ園を見に行っていない。 あっ… 私は、今の上手くいかない状況で、周りが見えなくなっていたのね。 そう思った途端、直ぐにでも見に行きたくなる衝動を抑えきれなくなり、飛び出していた。 …ハーブ園には誰か知らない男の人が、手入れをしていた。 一瞬警戒心が沸き上がるが、その一生懸命に作業する姿に悪い人ではないだろうと感じてしまう。 私に気付いたようです。 『こんにちは、ルイちゃんかな? 私は、お父上のゼビア殿に招待して頂いたアレンです。』 勝手にすまない、畑作業とか好きで見掛けたら我慢出来なくなったと、少しバツが悪そうに頬をかきながら挨拶をしてくれた。 父上より少し若いぐらい男の人だけど、その様子がなんだか可愛い人。
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