新たなる誕生日

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『理由は分かりましたが、俺一人ぐらいで状況が変わるのですか?』 『直ぐにはあまり変化はないでしょうね。 なので、ヒカルには可能な限り永い時を生きてもらわないといけません。』 永くと言われても、どれくらいなんだろう? それに、事故や病気、争いなどで寿命を全うすることは難しいことだよな… 実際、俺死んだし… 『異世界は、平和な世界なんですか?』 期待を込めて聞いてみる。 『残念だけど、平和ではなくて争いも多いし魔物とかも… 寿命を全うすることは、ヒカルが居た世界よりも少ないのが現実よ』 『それじゃ長生きなんて無理難題では…』 凄く矛盾してる。 俺は平和な地域に暮らしてたし、闘う技術といっても日本武道しか習っていないからな… 『そうね… 気休めにしかならないかもしれないけど、ヒカルに最大限の幸福とあなたの新しい人生に祝福を… …祈りながら、いつまでも見守っているわ。』 ヒカルは今までに、心配をされたことが殆どない。優秀だったから、やれて当たり前…本人は普通と思っていたようだが。 ヒカルは周りの人の幸福を願い、最大限の努力を重ねてきたが自分自身には無頓着だった。 その為、周りの人達も無意識にそんな扱いになっていた。 だから、 …そんなふうに言われた事が、体の中に染み入る様に―― 嬉しかった。 『分かりました、なるべく頑張ります。』 大人びた口調とは別に、ここにきて9歳の素直な可愛い笑みを浮かべる。 『やっと笑ってくれましたね、ヒカル。 笑顔の方が、とても可愛らしいですよ。』 いろいろ複雑な環境に育ったから、仕方がないのかもしれないけど。
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