1112人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
『理由は分かりましたが、俺一人ぐらいで状況が変わるのですか?』
『直ぐにはあまり変化はないでしょうね。
なので、ヒカルには可能な限り永い時を生きてもらわないといけません。』
永くと言われても、どれくらいなんだろう?
それに、事故や病気、争いなどで寿命を全うすることは難しいことだよな…
実際、俺死んだし…
『異世界は、平和な世界なんですか?』
期待を込めて聞いてみる。
『残念だけど、平和ではなくて争いも多いし魔物とかも…
寿命を全うすることは、ヒカルが居た世界よりも少ないのが現実よ』
『それじゃ長生きなんて無理難題では…』
凄く矛盾してる。
俺は平和な地域に暮らしてたし、闘う技術といっても日本武道しか習っていないからな…
『そうね…
気休めにしかならないかもしれないけど、ヒカルに最大限の幸福とあなたの新しい人生に祝福を…
…祈りながら、いつまでも見守っているわ。』
ヒカルは今までに、心配をされたことが殆どない。優秀だったから、やれて当たり前…本人は普通と思っていたようだが。
ヒカルは周りの人の幸福を願い、最大限の努力を重ねてきたが自分自身には無頓着だった。
その為、周りの人達も無意識にそんな扱いになっていた。
だから、
…そんなふうに言われた事が、体の中に染み入る様に――
嬉しかった。
『分かりました、なるべく頑張ります。』
大人びた口調とは別に、ここにきて9歳の素直な可愛い笑みを浮かべる。
『やっと笑ってくれましたね、ヒカル。
笑顔の方が、とても可愛らしいですよ。』
いろいろ複雑な環境に育ったから、仕方がないのかもしれないけど。
最初のコメントを投稿しよう!