護るべき時

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歩みを緩めて一歩一歩踏み締めて近付く。 入口の前に着くと、体が小刻みに震えて呼吸が速くなってくる。 『リタ、僕を見て。 いい、僕と呼吸を合わせて?』 リタの目を真っ直ぐ見て、ゆっくり深呼吸する。 ヒカルも彼方で過呼吸になって酷い目にあったことがあり,リタにそんな思いはさせたくなく素早く対応する。 何とか落ち着かせて、家の中に入ると… そこはまだ生活の後が残り、今にも何気ない営みが始まるような感覚をもっていた。 リタは部屋の真ん中に立ち尽くし、楽しかった家族との思い出を噛みしめ… 静かに涙を… そして嗚咽が込み上げて、一度上を向いた後にうずくまる。 「…パパ…ママ… どうして…置いていくの… 私も一緒にいきたかった…よ…」嗚咽混じりの声がヒカルの心に突き刺さる。
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