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「…はい、ありがとうございました」
そう言って僕はスマホを切ってため息を吐く。
もう…これで6件目なんだよなぁ。断られたのは。
バイト早く決めなきゃ…今月の実家からの仕送りは有り得なかったし…。あの額じゃ…家賃払って、光熱費払って…。いくら計算し直しても、赤字なのは確実。
ヤバイんだよなぁぁ…今月は飲み会あるし、欲しい本もあるし、DVDだって欲しい…新しいゲームだって…。
あ、…それよりも電話代もヤバイ。
日雇いバイトがめっきり減ってしまったせいもあるし…不景気だし、すでに何件も断られてるし…。
あ~もう、またマイナスな考えしてしまう。
ダメなんだよなぁ…すぐ暗い方…暗い方へと思考回路がグルングルン回るんだよ。
だからフラれ…。
あーーっまた、思い出してどうするんだよ自分!
彼女の事なんか早く忘れなきゃ…。
そうだよ、今はバイト…バイトを探さなきゃ、となるべく前向きに考えを走らせた。
「こんにちは、どうぞ」
といきなり目の前にティッシュが現れて顔を上げる。
自分と同じ歳くらいの男性がティッシュを僕に差し出す。
同情ならいらねぇ!
と受け取らずに行こうかと思ったけど、彼はティッシュ配りの仕事を嫌な顔ひとつせずにやってる善良な市民…。
受け取らなきゃ。
と僕は勝手にティッシュ配りのバイトくんの人生を妄想した。
はぁぁ…妄想も飽きたし、僕は空を見上げた。
晴天。
都会の空もこんなに青く綺麗なんだなぁ…僕の田舎と変わらない。
そう…僕は高校卒業してすぐに福岡の都会へと夢やら希望やらに胸ドキドキにして田舎から出てきたのに。
楽しかったのは半年間だけ、半年後に親が離婚したから。仕送りも急に減った。
学校辞めれば良かったかもなぁ。
あの時辞めてたら彼女にフラレ…そう考えてたら空が急にぼやけた。
くそう…泣いちゃう自分ってアホやし。
僕は貰ったティッシュで涙を拭こうとパリッとビニールの折目を裂いた。裂いて止めた!
「求人募集。時給1万より。上もあるわよ。」
とハート3つに魅力的な文字。
時給1万!
うそ…時給1万?
バスセンターの中の百均だって900円なのに。
あれは僕的には高いと思った…。
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