時給1万円のバイト。

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プッーと音が数回した後に。 「おそいじゃろ」といきなり広島弁っぽい言葉を話す男性が出た。 遅い?誰が?何が? 僕の頭の中でクエスチョンマークが3つ程浮かんだ。 「あの…」 僕はどう言って良いかわからずに、恐る恐るに電話の向こうの相手に声をかける。 「名前は?」 男性はそう返してきた。 「あ、日當良行です」 「誰も天気の話はしとらんじゃろ?名前は?」 やっぱり…そう返って来ると思ったんだ。 僕の名前はひあたりりょうこう…陽あたり良好…と相手は思ったんだろうなぁ。 「あの…ふざけてません、名字が日當で名前が良行なんです」 「……」 相手は黙ってしまった。 ヤバイ…もう断られる? 今までで最短な記録になるかな? 面接までこじつけてないから。 「…シャレた名前じゃのう…ええわ、そのまんま博多駅つきぬけて筑紫口に出てくれや」 男性は少し笑った感じで言ってくれたので僕はホッとする。 ホッとしてすぐに驚いた。 なんで…なんで、今…博多駅に居ると分かったんだろう? 僕は思わず周りをキョロキョロしてしまった。 「筑紫口ですか?」 僕は聞き直した…もしかしたら違う事言ったかも知れないし。「筑紫口…分かるじゃろ?電話切らずに言われた道を来て貰えたらええ、そしたら会社に着くけぇ」 「は、はい」 やっぱり筑紫口だ。 僕は何故が足速に駅を抜けた。 その後は言われた通りに道を歩き、 怪しいビルまで来てしまった。 「そのまま階段上がってきんしゃい」 そう言って男性は電話を切った。 階段は薄暗い。 なんだか絶望への階段のような…そんな感覚を持ちつつ、階段を上がる。 目の前に現れたアルミ製のドアに磨りガラスがあり、そこには。 「人質人材派遣株式会社」と手書きで書かれていた。 立派な筆体だなぁ…とつい、関心しながらドアをノックする。 「どうぞ」 声の主は電話の男性のようで…僕のドキドキは頂点まで来ていた。 緊張し過ぎて…前の面接では吐いてしまったけど。 今度こそバイト決まりますように。 神様に頼みこみながらにドアを開けた。 普通の事務所…それが初めて見た印象。 名前が名前だけにちょっと変なイメージを抱いてた。
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