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プッーと音が数回した後に。
「おそいじゃろ」といきなり広島弁っぽい言葉を話す男性が出た。
遅い?誰が?何が?
僕の頭の中でクエスチョンマークが3つ程浮かんだ。
「あの…」
僕はどう言って良いかわからずに、恐る恐るに電話の向こうの相手に声をかける。
「名前は?」
男性はそう返してきた。
「あ、日當良行です」
「誰も天気の話はしとらんじゃろ?名前は?」
やっぱり…そう返って来ると思ったんだ。
僕の名前はひあたりりょうこう…陽あたり良好…と相手は思ったんだろうなぁ。
「あの…ふざけてません、名字が日當で名前が良行なんです」
「……」
相手は黙ってしまった。
ヤバイ…もう断られる?
今までで最短な記録になるかな?
面接までこじつけてないから。
「…シャレた名前じゃのう…ええわ、そのまんま博多駅つきぬけて筑紫口に出てくれや」
男性は少し笑った感じで言ってくれたので僕はホッとする。
ホッとしてすぐに驚いた。
なんで…なんで、今…博多駅に居ると分かったんだろう?
僕は思わず周りをキョロキョロしてしまった。
「筑紫口ですか?」
僕は聞き直した…もしかしたら違う事言ったかも知れないし。「筑紫口…分かるじゃろ?電話切らずに言われた道を来て貰えたらええ、そしたら会社に着くけぇ」
「は、はい」
やっぱり筑紫口だ。
僕は何故が足速に駅を抜けた。
その後は言われた通りに道を歩き、
怪しいビルまで来てしまった。
「そのまま階段上がってきんしゃい」
そう言って男性は電話を切った。
階段は薄暗い。
なんだか絶望への階段のような…そんな感覚を持ちつつ、階段を上がる。
目の前に現れたアルミ製のドアに磨りガラスがあり、そこには。
「人質人材派遣株式会社」と手書きで書かれていた。
立派な筆体だなぁ…とつい、関心しながらドアをノックする。
「どうぞ」
声の主は電話の男性のようで…僕のドキドキは頂点まで来ていた。
緊張し過ぎて…前の面接では吐いてしまったけど。
今度こそバイト決まりますように。
神様に頼みこみながらにドアを開けた。
普通の事務所…それが初めて見た印象。
名前が名前だけにちょっと変なイメージを抱いてた。
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