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「1万なのは本当、相当稼げる」
女性は微笑む。
やっぱり本当なんだ。
凄い…じゃぁ、欲しい本もゲームも、服も…大きなテレビも買える?
僕はまるで宝くじが当たったかのように欲しい物を連想した。
「で、赤いカップは向こうだから、アンタもコーヒー飲むん?だったら客用は白」
女性はカップのありかを指さす。
「あ、すみません」
僕は慌てて赤いカップと白いカップにコーヒーを注いだ。
「砂糖は隣」
女性が指さす方向にスティックシュガーがある。
僕はスティックシュガーをポケットに入れて、そして…ふと、我に返った。
「マミさん?」
さっき男性がお茶と叫んだ時に言った名前を呼んだ。
「何、気安く呼んどん?」
マミさんは僕を睨んだ。
用事って…忙しいって煙草で忙しいって意味なんですか?
そう聞きたかったが勇気は無かった。
「すみません」
僕はカップを手に男性の元へ戻った。
「ご苦労」
男性は笑顔でカップを受け取る。
なんだかココはおかしいかも。
客にコーヒーつがせるし、働いてる人は仕事せずに煙草吸ってたし。僕はカップを持ったまま立ち尽くす。
このまま…帰った方が絶対にいいような気がする…
時給1万円は…惹かれるけど…でも、なんか…とにかく逃げたい。
「あの…」
すみません、僕やっぱり…と続けるつもりだったんだけど「座らんの?」と男性に言われ、思わず座ってしまった。
だって、何かこの人…威圧感があって怖い。
ちょっと僕を見ただけだと思うけど、まるで目が
「殺す!」と言ってるようで…。
ほら、よく犬が強いモノにお腹見せて降参するように…僕も逆らえない。
本能が彼に逆らうなと教えてくれている。
「ほいじゃぁ、名前書いて」
と男性がボールペンと紙を僕の前に差し出した。
「これ…?」
紙は履歴書ではなく、いろいろと質問が書かれている。
「アンケートじゃ、何か文句あるんか?」
そう言って彼は僕を見る。
見ただけなのに怖いよぅ。
僕は小さくイイエと言って名前を書いた。
「日當ってそう書くんか…」
マジマジと僕の名前を彼は見入っている。
「あの…質問してもいいですか?」
僕は恐る恐る彼を見た。
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