巨人と眼鏡娘

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2015年4月。 AM8:00 「やっばぁ遅刻じゃん」 月丘市。 三年前、日本に現れたヴェノムと謎の巨大ロボットとの戦いの中、この市が最も激戦区となった。 最後の戦いから三年。 戦いで荒れ果てたこの地を、世界にもその名を馳せる日本の鬼崎重工が一帯の土地を買い取る。 そして社長である鬼崎竜胆の指導の元、街は復興を開始。 莫大な資金と資材、人材そして最新の技術をかき集め、街は当時の傷跡の痕跡すら消す程までに回復していった。 「もぉ~、なんで起こしてくんないかなぁ」 そんな月丘市の市街地の一角に、今年高校生になったばかりの少女がいた。 部屋着から高校の制服に腕を通し、黒く長い髪を後ろで結った少女は、愛用の眼鏡を掛け直す。 家の二階にある自室を出て一階のリビングに降りる少女。 点けっぱなしのテレビからは今日の天気、快晴という予報が聞こえてくる。 そしてリビングを抜けキッチンへ向かうと、そこには朝食の置かれたテーブルに突っ伏して寝ている両親の姿があった。 「徹夜明けじゃしょうがないか」 自分の為に用意してくれた朝食を全て食べることが出来ないのは心苦しい。 しかし今は時間がない。 「もぉ~、なんで私が典型的な遅刻する女子高生やるはめになるのよぉ」 申し訳程度に用意された食パンをかじり、家を飛び出す様は確かにアニメや漫画に良くある朝の光景だった。 少女が飛び出した後、少女の自宅のキッチンで両親が親指を立ててニヤリと笑った事を少女は知らない。
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