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(――ん、メールだ)
巧馬が通う学校の教室で、最近流行りのタッチパネル式の携帯を操作する少女。彼女が巧馬の弟和希に伝言を頼んだ霜野 遥だ。後ろ頭で髪をひとまとめにしたポニーテールと呼ばれる髪型が、彼女の性格を表している。
机の上に携帯をおいて人差し指を画面の上を滑らすように操作をして、メールの受信フォルダを表示させる。
送信者:巧馬
本 文:とりあえず体調は落ち着いたよ、でもなんか〝無害奇病〟って言われる病気らしいんだ。それで、言われた自分でも信じられないんだけど――
―――
それから先に書かれていた文字を見て、遥は目を丸くした。“性転換、しちゃうみたいなんだ。”
(えっ……巧馬が? え、性転換って、どういう――……)
漢字からこの言葉が意味することはだいたい把握できた。それでも、どうして巧馬がそうなるのか、そこの部分が理解できなくて、遥は携帯を見つめてフリーズする。
「遥ちゃん……大丈夫?」
隣の席の女の子に声をかけられても、遥は声どころか全く反応できなかった。
*
「――勇!……ぁ、あんた、今、ヒマ?」
ホームルームが終るやいなや、遥は教室を飛び出して隣の教室へと駆け込んでこう叫んだ。
こちらのクラスもホームルームが終わった直後のようで、担任が出席簿を持って教室を後にしようとしている。
「――遥?」
教室の中の空気が一気に固まって、少し間をおいて遥が呼出した相手が弱々しく声を上げた。
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