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目が覚めたといっても、寝過ぎたからなのか。それとも、体中から伸びている管のせいなのかはわからないが、容易に起き上がることができない。かろうじて動く首と眼球をフルに使って、巧馬は今が何時なのかを知ろうと時計を探す。
(――正午過ぎ……)
予行練習は1時間目から行われていたので、それほど時間が過ぎてはいないのだろうと思い、目を閉じた。
――どれだけの間、眠っていたのだろうか。巧馬が目を覚ましたとき、部屋の中は薄い朱色の光が窓から入り込んできていた。
「……兄ちゃん、目、覚めた?」
冷蔵庫の脇の丸椅子に座る我が弟の和希の声が耳に入って、首をその方向に向ける。
学校帰りなのか、椅子の下に黒いランドセルが置かれていた。
「――母さんは?」
「なんかお医者さんと話してる……」
「?」
なんかオレの身体の事で問題でもあったんだろうか――……。
「遥姉ちゃんから伝言があるんだけど、聞く?」
「遥から?」
沈黙した巧馬の気を紛らわすように、和希が新しい話題をふってきた。
「うん。えと、『目ぇ覚めたらメールしなさい』って……あ、これは遥姉ちゃんの言葉をそのまま言っただけだからね?ボクの言葉じゃないよ?」
兄に対してタメ口を言ったことを着にしているのか、和希は伝言を言った後慌ててそう付け足した。
「別に、気にしないよ。遥なら、そう言うだろうし。」
――というか、病院内って携帯電話の使用は禁止されていなかったか?
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