第00章 予兆

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しばらくして母さんが戻ってきた。医者から何を言われたのかはよくわからないけど、頭のなかの整理ができていないというか、今は何も考えることが出来ないような事をぼそぼそと呟きながら、和希といっしょに部屋を出て行く。その際「巧馬、当分の間は入院するからね」と言われ、巧馬はひょっとして自分これから死ぬのか?などという被害妄想に似た考えが降りてくる。 ――母さんと和希が帰って行ったあと、20分もたたないうちに夕食になった。 院内食は学校給食みたいで少 し楽しみではあったものの、学校給食よりも全体的に味が薄くなっていて、成長期真っ盛りの巧馬には物足りなかったようだ。  それに、巧馬が入院している部屋が個室であるということが、巧馬が何となく感じていた退屈さを助長させた。複数人が共同で使用する病室なら、様々な会話が飛び交うだろうけれども、個室では、見舞いの人が帰った後は完全に一人になってしまう。 (ゲーム……は当然無いし、なにか暇を潰せるようなもの――漫画も無い……か。)  暇を潰せる娯楽がないなら、もういっそ寝てもいいんじゃないかと考えた巧馬は、就寝前に用を済まそうと室内にあるトイレへと向かった。 (――? なんか違和感が……)  用を済ませた後、自分のモノに違和感を覚えたが、それでもたまにはこんな日もあるよな、と。強引に自分を納得させてそのまま就寝した。
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