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「採寸会場って、高校だっけ?」
「そうだよ。」
通学路の下見を兼ねて、オレたちは高校に向かっている。
「消雪パイプの水捌け悪いな…」
「まぁ今更だけど」
「雪国じゃしょうがない。これがないとロクに出歩けないんだから…。」
歩道のない昭和規格の旧国道の路肩を3人一列になって歩く。片側1車線道路の中央部にある、地下水を使って降り積もった雪を融かす融雪装置の水が路肩に溜まり、溶け残った雪と合わさって歩きづらさを助長している。側溝まで雪で埋まり、完全に排水機能がお釈迦になっている。
「何で歩道がないの!」
遥がビシャビシャと水を跳ねながら嘆くように言う。それを言われても無いものはしょうがない。でも、この道がちょっと前まで国道だったということに琴音も呆れる。
「贅沢言うなって。ほら、そこの路地入れば少しはましになるぞ。」
遥をなだめるように勇が言う。
「・・・。」
踏切を越えて斜め右方向に屈折した後、待望の路地に入る。裏路地なので車通りは少ないが、融雪装置が整っていて、綺麗に雪が融けている道は、さっきの旧国道よりもかなり高規格に思えた。
「道の真ン中まで歩道!」
遥はさっきと打って変わって子供のように融雪装置――消雪パイプの上を走っていく。
「っおい、転ぶなよ!?」
勇が声を上げると、遥は「へーきだよー」と言うように走っていく。
「…びしょ濡れにならなきゃいいね」
「…そうだな。」
消雪パイプって、たまに勢いのいいものがあって――そう、噴水みたいに最高到達点がワンボックスの背丈みたいになることが――
「ぎゃぁあ!?み、水!!」
それを考えないと、今の遥みたいに“罠”に嵌ることがよくある。
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