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遥に先導されて、やってきたのは駅に隣接している観光物産センターの一角にあるイベント用に区切られた区画。
「ねえ遥」
「なに?」
「なんで扉の脇に“一歩遅れの卒業式!”って、書かれているの?」
「あ、ホントだ。」
私の問に、勇が遅れて気づく。
「ふふん、私が色んな所に根回しをして、便宜を図ってもらったのだ!」
両手を腰に当てて、どうだ参ったかと言うような雰囲気を醸し出す遥。その姿を見ても私はなんとも思わないでただ「それで?」と言い返すだけで遥の期待する反応ではなかったのか、「おいおい」と遥がよしもとよろしくのコケ芸を見せてくれた。
「で、琴音はここでちょっと待っていて欲しいんだよね。準備というものが……」
「へ?」
「あ、勇は一緒に来て。手伝い。」
「え、あ。おい待て引っ張るな……」
一瞬のうちに勇の手を引いて遥が部屋の中へ消えていく。1人残された私は、廊下で不毛な時間を過ごすことになってしまう。
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