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どのくらい、ここで待っているだろう。廊下を通る人が1人でいる私をちらちら見ながら通り過ぎていく。嬉しいのか悲しいのか、ナンパと呼ばれるような行為を受けているわけではないので困っていは居ないけど、それはそれでなにか感じるものがある。
「……。」
気分転換になるだろうと思って携帯のSNSを開いても、一般的には就労時間帯なのか、参加している人が少なくて、いよいよ手持ち無沙汰になってしまった。
「……あの、すみません……」
「はい?」
声をかけられて、その方向を向いた。すると目の前には見覚えのある少女が立っていた。中学校を着ている少女を見た琴音は、ふと彼女のことを思い出した。
「あの、勾玉の間はここで合っていますか……?」
琴音が背中を預けている扉の裏手が、少女の言う勾玉の部屋。この部屋に用事があるということは、遥がクラスメイト全員に声をかけていたに違いないと思った琴音は、他人のふりを装っていかにも白々しく
「あ、丁度ここですね。すいません、扉塞いじゃってて」
そう答えて、好機とばかりにその場から離れる。
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