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「え!風邪ですか?」
思わず上げてしまった大きな声。
直は自分がどこにいるかを思い出し、慌てて口を押さえた。
木曜の昼休み。
食事を終えた直は図書室に行くと、返却された本がカウンターの裏に溜まっている事に気付き、本を探すついでに棚に戻し始めた。
歴史のコーナーに行くと、図書室の常連とでも言うべき生徒、黒田渉に声を掛けられたのだ。
渉は、先日のフットサル大会の応援の礼を言うと、唐突に陵汰が風邪を引いて寝込んでる事を伝えた。
「陵汰の奴、3日も学校を休んでる」
口から手を放して渉を見ると、彼は目の前にある棚から1冊を取り出し、上下が逆さまになっていた、その本を正しく元に戻していた。
几帳面な性格だ。
陵汰と比べると、正反対な2人だと改めて感じてしまう。
「あの、バカ。風邪ひいても寝込んだ事ないとか、豪語してたくせに」
文句を言いながらも、かなり心配しているようだ。
そして以前、薄着の陵汰に寒くないのかと尋ねた時に、同じように言われた事を思い出した。
けれど、そんな陵汰が体調を崩すのは余程の事だろう。
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