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「あの、大丈夫でしょうか?」
父親と2人暮らしの陵汰。
父親とは、すれ違いの生活をしている彼の面倒を見てくれる者が、いるのだろうか。
「今日辺り、様子を見に行こうかと思ってるんだ。柴崎さんも来ないか?」
渉は直と陵汰が別れた事を知らないのか。
当たり前のように誘われ、何と返事をして良いものか迷う。
「今日は……用事があるので。ごめんなさい」
俯いて、持っていた本のカバーを見つめる。
「……いや、無理を言って悪かった。気にしないでくれ」
渉はそう言って、直の手から本を抜き取ると、直の身長では脚立を使わねばならない高さの棚に戻した。
直の手元には、気がかりな気持ちだけが残る。
ウォーターフロントに立ち並ぶタワーマンション。
その中の一棟を見上げる3人の少年達に、冷たいビル風が吹き付ける。
「どうしよ……顔合わせた瞬間、感染したりなんかしたら」
寒さではなく、緊張に震える敦史が口を開いた。
「大げさだ、風邪くらいじゃ人は死なねーよ」
冷たい空気に首をすくめながら大輝が答えた。
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