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「ダメなの?」
「ダメだねぇ……」
「けち……」
課題で出すって言ったのにけち扱いですよ……
「他の絵……なら別に良いけど……」
僕は授業以外でも一人の時は大概絵を描いている
それは日課というか……
やらなきゃ落ち着かないといった感じで……
「……他の絵……」
「ってゆかさ、僕よりも巧い人なんて幾らでも居るよ?」
僕は確かに、芸術科であって、子供の頃から絵は描いていたけど……
やはり、此処に来たらそれが『当たり前』だった
だから僕は秀でてるんじゃなくて、平々凡々な感じなんだ……
「良いの?
ダメなの?
はっきりしなさいよ……」
いや、ダメって事は全然ないんだけど……
むしろ、嬉しいというか……
気恥ずかしいというか……
「……はっきりしなさいよ……」
二回目の言葉
心なしかドスが利いているような気もする
「じゃあ、他の絵なら……」
迫力に圧されてしまう
「そ、じゃあ……」
パラパラとスケッチブックをめくりだす櫻庭桜花さん
「これかしら?」
「どれ?」
言って、覗いてみる
それは風景画だった
日曜日にふらふらと散歩をして……
噴水と花壇が綺麗だったから……
「そんなので良いの……?」
何の変哲もない、ただの風景だ
「何よ、文句ある?」
いや、ないけども……
「貰うわよ?」
「あ、ちょっと待って」
下手に引きちぎると解れて使い物にならなくなる
だから、僕は自分でそれを渡す事にした
「はい」
何の変哲もない風景画を渡す
「ありがと
あ、ココにあんたの名前が欲しいわ」
え……
「サインって事?」
「それ以外に名前書く意味があるの?」
何故だ……
僕のサインって……
「将来、活躍したら値が上がるかもしれないしね」
途方もなく実現の難しい提案だな……
しかも、押し入れの中でくちゃくちゃになってる可能性がスゴく高い……
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