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「相手にする価値が無いから要らないわ」
「……そうか」
桜庭さんの反応を見て、早々に結論を出したのは誠だ。
「何か人手が要るなら言ってくれ、友達が気になってるんでな……
その為なら手を貸そう」
そう言って足を教室に向けて歩き出す。
「ちょ……
誠!」
こんな目に見える事態があるっていうのに……
何もしないで素通りするの!?
僕は誠の後を追いかける。
「また後でっ」
一応、桜庭さんに一声掛けておく。
「はいはい、気にしないでね」
手をヒラヒラと動かして素っ気なく僕の言葉に応える。
「誠っ」
先を行く誠を呼ぶ、だが誠は止まろうとしない。
「誠ってば!」
「何だ?」
足を止めずに僕に返事を返す。
「どうして引いたのさ?
アソコで協力してれば……」
「当人が望んでないのにか?」
僕の言葉を遮り、誠が言う。
当人が……
望んでない?
「だけど、それは強がりでしょ?
意地を張ってるのかもしれない」
「仮にそうだとして、協力していい形に収まったと思うか?
それに聖、確証の無いことを言うのは嫌いだが……」
誠が僕を見て止まる。
「桜庭は本当に堪えていないんじゃないのか?
あの女は他のとは違う価値観を持ちすぎているように思える……」
「どういう……意味?
それに、だからって言ってあんな事を黙認するの?」
「そういう意味じゃない。
だが、仮にだ。
本当に助けてほしいなら……
本当に傷ついたなら、もっと……
一瞬でも表情に出てしまう筈だ。
さっきはそれが全く無かった」
ホントに誠は僕の心を揺らすのが上手いと思う。
何故なら、確かにそうだから……
今日の事でも、昨日の帰り際でも……
本来イジメのような現場でも桜庭さんは普通にしている。
それは強がりだと、自身で決めつけていた、それをされて傷付かないハズが無いと……
「でも、クソ面白くもない話だよな……」
後ろを見たらハヤトがそう言って腕を組んでいた。
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