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開けないで正解だったかも……
「いくぜぇ……」
深く腰を落とし、静かに呼吸を調えるハヤト。
芝居がかったその行動は最早クラスの注目の的になっていた……
いや、自分で吹っ飛んでた時から迷惑そうに見られてたんだけどね……
僕は前を向き、授業の開始に備えて……
「さぁー!」
まるでどこかの卓球選手のような決めの声を張り上げているハヤト。
パカッ!
同時に鞄が開く音のようなのが聞こえる。
(やっと開け……)
「きゃあぁあぁあ!」
「うぼぇあ!」
「おげぁぁぁ!」
同時に途轍もない異臭と悲鳴がクラスに木霊する!
「何!?
この臭い……!?」
鼻を抑えても尚刺激される……!
臭いは形容しがたい!
一言に臭いと言っても色んな種類があるだろうけど……
「池上、てめぇ何しやがった!」
「何のバイオテロなのッ!?」
教室、騒然。
「へ……
へへ……」
ふらふらと僕の机に歩み寄ってくるハヤト。
臭いが一際キツいのは爆心地に居た代償だろう……
「どうやら……
俺は開けちゃなんねぇツンドラの箱を開けちまったみたいだ……」
僕の机に寄りかかって、力のない声で呟く。
「寒そうな箱だね……」
多分パンドラって言いたかったんだろうな……
「俺はもうダメだ、だからおがっち……
ツンデレの箱……後は任せた……ぜ」
力尽きる素振りを見せる。
まるでどこかの燃え尽きて真っ白になったボクサーみたいな安らかな顔をして……
「名前、変わってたよ……」
ツンデレの箱って……
どんな箱なんだか……
「こら」
横から誠がハヤトを蹴っ飛ばす!
僕の机にもたれ掛かっていたハヤトはそのまま横にビタン!と倒れる。
ハヤトの身体も誠程ではないけど大きい方だ。
それを軽々と蹴っ飛ばせるくらい、誠は力が強い。
学園最強の称号は伊達ではないのだ。
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