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「えーと……」
近付く
何かさ、物凄い緊張が……
だって、手を握るんだよ?
これは一大イベントだ……
僕は意を決して、その手をとる
絹のような手触り……
すべすべで柔らかい……
そのまま、少しの力で引いて地面へと誘う
女の子は軽い音を立てて着地した……
どずっ!
瞬間、僕の身体はくの字に曲がった
「!!??」
言葉にならない
「誰が触れって言ったのよ……」
痛みのあまり、僕は絵描き道具をその場に落とした
「まったく……」
その中から、女の子はスケッチブックを迷いなく取り出す
「あっ!
あの……それは見ない方が……」
と言うか僕がかなり恥ずかしい
モチーフになった子に見られるなんて……!
「へぇ……!」
見た感想だろうか?
「あんた、上手いわね」
いやいや、そんな事は……
「と……ところで、君の名前は……?」
「……?
何?わたしの事を知らないの?」
……やっぱり有名人なんだろうか?
「だから見るからに無防備なのね……」
む……無防備っ!?
「わたしは、桜庭桜花」
さくらば、おうか……
桜の下で寝ていて
桜色の髪の毛をしていて
瞳も桜色で……
名前も桜が使われている……
なんてぴったりな名前なんだ……
「呼ぶ機会があるなら、桜花ね
それ以外は認めないわ」
な……名前呼びだって!?
そんなハイレベルな事をいきなり強要するだなんて……
「でも……」
「その代わり、わたしはイジリって呼ぶわね」
「それは遠慮出来ないかな、桜庭さん」
一気に浮かれる気持ちから熱が引く
まるでこれからの高校生活を予期するかのような名前じゃないか……
「ぴったりそうよ?」
イジリがぴったりで「いやっはぁー!」と喜ぶヤツは居るんだろうか……
「嬉しくないよ……」
「そんな部分が、ぴったりなのよ」
どうしろと言うんだこの子は……
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