恋に堕ちて

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今にも「やっぱり別れたくない」という言葉が聞こえてきそうな雰囲気の中、行動に出たのは男の傍らに居た女だった。 男の腕を引いて、彼女に見せ付けるように、男に自分の存在を再認識させるように、自分の腕を絡めた。 女って強かだ。 良くも悪くも。 皮肉も勿論含んでいるけれど、尊敬もする。 彼女も、そうであればいいのに。 いっそ、泣いて引き留めて、別れないでとせがむような、そんな女だったら。 俺は直ぐ様、清々しい気持ちでこの想いを手放して、ここから離れる事が出来るのに。 可愛げのない強がりに、こんなにいとおしさを募らせる事なんてないのに。 「それじゃ私、行くね」 彼女は最後まで笑顔を崩すことなく、凛と構えていた。 体を翻して、颯爽と去るその後ろ姿に、痛感させられた。 彼女を手に入れたい、って。 俺の恋は、その炎を消すどころか、燃え上がってしまった。  
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