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「……あ、いや……」
隆司の顔がみるみる赤くなる。
「……可愛い?」
ワンピースの裾をつまんで、小首を傾げてみる。
隆司の反応にどう対応していいか分からなくて、茶化すように。
そんな私の態度に、隆司は一瞬言葉を詰まらせたように見えたのだけど……。
「……めちゃくちゃ可愛い」
小さく低い声で。
プイッとそっぽを向きながら。
だけどしっかりと私の耳に届いたその言葉は、隆司以上に私の顔を赤くするのには十分だった。
「………………あ、ありがとう」
やばい。
なにこれ。
心臓の音すっごい。
そっと胸に手を当てた。
早鐘を打つという表現がぴったり。
苦しい。
……でも、嬉しい。
隆司の一言がこんなに嬉しいなんて。
自分でも戸惑うくらいに、私は喜んでいた。
「……その、髪もさ」
「ん!?」
隆司の『可愛い』という言葉を噛み締めていた私は、隆司が話し始めたのに対して不自然なほど慌てて反応した。
「いつもは上で結ってること多いじゃん?」
そう言いながら、隆司は自分の頭の上に拳をつくった右手を掲げた。
おだんごヘアのつもりかな?
「うん。だね」
「おろしてんの、いい。くるくるしてんのも」
「あ、そ、そう?」
くるくるって!
語彙力!
と、付き合う前の私ならダメ出ししていたかもしれない。
でも今の私は、その『くるくる』発言にも胸を高鳴らせてしまっていた。
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