そうだ。きっとこれは夢なんだ。

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どこか気の抜けた表情で、黙々と、鈴莉の着せ替え人形に徹しているのだ。 黒枝は顔立ちも良く、見ていて飽きないのだから、別に文句は言うまい。 しかし、何故、ぶかぶかをチョイスするのだろうか。もしや、ぶかぶかしか着させないつもりなのだろうか、我が妹は。 いや、別に、一向に、構わないのだけれど。というか、むしろ、大歓迎だけれど。 着させれば、何でも大概似合うのだろうが(勿論、相応不相応の問題はあるが)、一番似合っていると言われれば、ほぼ間違いなくぶかぶかファッションだと断言出来る。 言っておくが、個人的な嗜好の話ではないのだ。趣味の話ではない……のか? 「鈴斗。目がいやらしい」 黒枝に真顔で指摘された。 「…………」 絶句。俺も。店員も。 だって、明らかに引いている。 一歩下がってとかいうレベルではなく、店内から立ち去るレベルで。明らかに俺を遠ざけている。明らかに俺は遠ざけられている。 ちょっとヒドくない?それ。 しかしどうやら、表情が崩れていたらしい。それは、黒枝の言葉や、周りの反応から立証済みなので、要学習である。 「あーやっぱりお兄ちゃんロリコンだー」 「指差すな。棒読みすな」 「アーヤッパリオニイチャンロリコンダー」 「片言だったら良いって事じゃねえよ!てか、ロリコンでもねえよ!」 ちょっと黒枝にでれっとしたくらいで、どうしてロリコンの謗りを受けないといけないのだ。いけないのか。充分じゃね? 「だって、お兄ちゃん、最近私の裸に興奮してくれないし」 「風呂上がりに真っ裸でいるのは、確信犯だったのかよ!」 本当、末恐ろしい奴である。 いくら自宅とは言え、いくら家族しか居ないからとは言え、タオルも巻かずにほっつき回るのは、年頃の女の子としてどうかと思う。 「ちょっとは興奮してくれたっていいじゃーん。美少女の裸体だよ?一糸纏わぬ姿だよ?負け犬は拝む事が出来ない芸術品だよ?」 ツッコむべき点が多過ぎて、逆に何も言えなかった。 どれだけ自信家なのだろうか、我が妹は。そして、どれだけ自分の裸を推したがるのだろうか。 「いやだって兄妹だし」 さすがに、妹の裸体ごときでは興奮しない。 だったら、妹のどんな姿には興奮するのだろうか。いや、考えるべきではないか。 「やっぱり、兄妹の壁は大きいかー」 鈴莉はぼそりと、俺に聞こえない程度の大きさで呟いた。 「何か言ったか?」
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