凛として黒羽

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ちらと視界の端に、僅かばかり前屈みになった男子生徒が映る。 ……ほら見ろ。 「あ、そうだ。たまにはこのままどこか行かない?放課後デート、ね?鈴斗君」 「いや、他に二人居てますやん……」 「じゃあダブルデート?」 「百合カップルじゃねえかそれ!」 しかも二人が二人とも顔馴染み――どころか、実妹と親戚である。 「じゃあ4Pデートでいいよもう」 「なげやりに何言ってんだ!それ、意味分かってんの!?」 「分かってるに決まってるじゃない。こんなところで言わせるつもり?鈴斗君も鬼畜ねえ、今に始まった事じゃないけど」 「お前、ホント俺を貶すのだけは上手いよな」 言動が超ナチュラルだもん。多分、身に染み付いてるんだろう。……何で染み付いてるんだろう。 「やっぱり彼女たる者、彼氏に関しては一番でないと。一番良く理解していて、一番愛していて、一番考えてる。それから、一番ディスるのが上手い」 「最後の要らねえ!」 止めて、そんなところで一番を競わなくていいから。 「だって、他の人があたしより鈴斗君を上手に貶すのとか見たくないじゃん」 「その嫉妬は可愛くねえな!内心複雑過ぎるわ!言っちゃってる時点で内心じゃないけどね!」 頬を膨らませて可愛さアピールしなくていいから。正直台詞とミスマッチだし、そんな事しなくても充分可愛――げふんげふん。 「ねえ、どこ行こっか?」 「今までのくだりがなかった事に!」 しかも行く前提だし。どこ以前に、行くか行かないかを決めてないんだが。 「ねえってば」 でも、まあ。 「たまにはゲーセンとか行ってみるか」 なんだかんだ、俺が一番楽しみにしてるのかもしれないけど。 という訳でやってきました、ゲームセンター、通称ゲーセン。 俺は基本的に学校からそのまま直帰なので、寄り道をするという経験を人並み程にもした事がない。 だから、この煌びやかで賑やかな感覚は、ある意味新鮮だった。入り浸ろうとは思わないが。 客層はやはりと言うべきか、十代や二十代が目立つ。友達付き合いやカップル、一人で来ている人もちらほら見受けられる中で、俺は――俺たちはかなり異端だった。 両手に花、どころか、両手に抱えきれない花束状態でのご入店だ。一体何様のつもりだと、我ながらつっこみたくなる。 勿論、そんな状態であるから、嫉妬の目線(主にシングルピープル)を絶賛買い取り中だ。
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