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「じ、じゃあ、行きますよ~」
もうさっきからびびりっぱなしの俺。情けない事この上ないが、多分俺でなくてもびびる。確実に、鴉天狗の上を行く殺――惚気?
「ねえ、鈴斗君」
カコーン。
「はい何でしょう」
カコーン。
「あたしたちが勝ったら、ご褒美期待してるね」
カコーン。
「え、何でする前提――」
スコーン。
あ。
「まず一点ね」
「い、今のは、お前の発言に動揺したからだし」
それでもダメな事に気付いちゃったし。ダメダメだし。
「あーそう。そういう事にしておいてあげる」
聖母愛実。その正体は、聖母の皮を被った悪魔である。
「てか、期待してるって言っても、具体的に何をどうすればいいのかさっぱりなんだが」
カコーン。
正直、そういうのはよく分からない。そういうのとは、ご褒美とか或いは秋空のように移ろいやすい女心である。
「じゃあキスでいいよ」
カコーン。
「なんか妥協されたみたいな感じになってるけど、全然妥協されてないからなそれ!」
カコーン。
「勿論、公衆の面前で」
カコーン。
「ハードル上げ過ぎだろ!」
スコーン。はい、二点目ですね。着々とそのご褒美(という名の罰ゲーム)が迫ってきています。
「じゃあ、家帰ってから三人でにゃんにゃんとどっちがいい?」
「キスします」
即答だった。
「あ、九紅璃と黒枝ちゃんも加えての五人がいいの?しょうがないなあ」
「ねえ、人の話聞いてる!?」
てか何それ、一人でさえまだなのに、いきなり五人はいくらなんでもレベルが高い。
いきなりでなくとも五人同士はないか。日本は一夫一妻制だし。
物理法則を無視出来る俺たちも、ある意味ただの一般人だ。法律を無視する事は出来ない。
というか、さ。
「俺が勝てば、ノープロブレエェェェェムッ!」
「うん、それ死亡フラグ。ようやくキスする気になったんだね」
ハッ、死亡フラグなんか目じゃないね。
と、粋がっていた過去の俺に言いたい。最大の愚か者はお前だ、と。
結果から言えば。
「フラグ回収どうもありがとうございました。さて鈴斗君、これからご褒美のキスをする訳ですが、誰から行きますか?」
まあ、そういうこった。
あれだけ盛大にフラグを立てたのだ。回収されない筈がなかった。……はあ。
ご褒美の辺りで上手く交渉出来ていれば、もっと言えば三対一などと言い出さなければ、きっと回避出来た状況に違いない。
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