1371人が本棚に入れています
本棚に追加
つまりは、仲直りの仕方を知らないのだ。理由もなく黒枝が怒る訳もないし、多分俺が悪いのだろう。
生憎と思い当たる節がないので、どうにか本人の口から聞き出せないだろうか。
という訳で夕食。
「なあ黒枝――」
ふいっ。
「なあ――」
ふいっ。
「な――」
ふいっ。
……ダメだあぁぁぁぁ、会話すらさせてもらえない。
そろそろヤバいです、精神的にキツいです。
俺以外――鈴莉や九紅璃や凜音とは普通に話してるのに。
「うん、お兄ちゃんがいけないね、それは。まあ、私が言えた事じゃないんだけどさ」
事情を説明されたらしい妹にも責められ、俺は再起不能目前だ。
が。
なんだかんだ鈴莉は優しかった。なんたって、ヒントを残してくれたのだから。大方黒枝に口止め食らっているのだろう。
「それを言うなら、私もですよ」
凜音からも、ヒント。
箸を握る手が止まる。
三人がいまだに卓を離れず黒枝と喋っているのは、俺に思考時間を与える為だ。
ならば考えろ神酒島鈴斗。お前はそれしか出来ないのだから。
――。
時間にしてみれば一瞬だった。一瞬で、思い出した。
それは今朝方の事。黒枝が怒るのも無理はない。当然だ。俺はそれだけの事をした。
箸を置いて席を立つ。
「黒枝」
呼ぶと、刹那目が合った。
「そっちの話が終わったら、俺の部屋に来い」
上から目線の命令に近かったが、むしろその方が伝わる。
鈴斗が食卓を去った後。
「鈴斗ってば大胆だね。すっごい肉食系っぽかった!」
「黒枝を食べる気なんだあの兄。あいちゃんや私じゃなくて黒枝が一番かー」
「そういうのを世間一般ではペドフィリアと言うんですよね?」
「あちゃー、とうとうロリコンからグレードアップしたか。上位互換のジョブチェンジだね、うん残念」
「シスコンはこれ以上グレードアップしないのかな?シスコンはあくまで家族愛であって、恋人愛じゃないもんね、理不尽だこんなの!ロリが属性的に妹を上回ってるなんて認めないぞ私は!」
「いいじゃないですか、私なんてそんなの一つもありませんし……」
カオスが更に加速していた。
もう鈴斗の部屋行ってきていいかな私。
あまりこの場に居たくないんだけど。
鈴斗もどうやら思い出したようだし。まあ、許してあげない事もない、かもしれない、のかな?
少しくらい、強引な要求しても……いいよね?
最初のコメントを投稿しよう!