1371人が本棚に入れています
本棚に追加
じゃあ、と黒枝はその口を動かした。
「鈴斗ラバーズに加えてほしい」
ラバーズってアレ、だよな。
恋人。いや、複数形だから恋人たち、か。
……で、誰を加えると?
昼間、愛実が言っていた事を思い出す。
――あたしとすーちゃんでしょ?これで二股。それから、凜音ちゃん。これで三股。あ、九紅璃と黒枝ちゃんも?五股なの?
あながちそうなってしまいそうで怖い。先見の明でもありそうだ。もう少し良い感じの未来を予測してくれるとありがたいのだが。
「黒枝がいいなら、いいけど……」
煮え切らないなあ、俺。ここぞというところで優柔不断を発揮しちゃうんだもんなあ。
「これで合法的に性交が可能」
「結局そこに帰結するのかよ!」
何それ、身体目当てみたいでぞっとしない。まあ、黒枝はそんな娘じゃないけれど。
「というのは冗談で、実際のところあまり要求はない」
「相変わらず分かりにくい冗談だなあ。ん、了解した」
黒枝の頭に手をあてがう。髪の毛の流れに従って、手を下ろしていく。
「ふにゅう……」
気持ち良さそうにする声が聞こえた。
一番下まで行ったら、頭に戻ってもう一回。もう一回。
ふと思うのだが、どうして女の子という生き物は良い匂いがするのだろうか。たまに人間かどうか疑いたくなる。まあ、今目の前に座っている女の子は人間ではないのだけれど。
なでなで。
「うにゃあ……にゅ」
背中からもたれかかり、完全に脱力。そんな仕草も可愛らしい。さすが、クーデレロリータ美少女は何やらせても様になる。
撫でるたび、その耳はこそばゆそうにぴこぴこと動き、尻尾はしなやかにちょろちょろと振れる。
「気持ち良いか?」
「ん」
たったそれだけの返事だけど。
「そっか」
俺を安心させてくれるには充分過ぎた。
にゃーごろごろと喉を鳴らす黒枝。ああ癒やされるなあ。
黒枝の為、だったけれど。そういう約束、だったけれど。
案外。
俺が一番得してるのかもしれない。
「何あれ、良い雰囲気過ぎるんだけど」
ドアの隙間から部屋の様子を覗き見つつ、私は不満を呟いた。
「何というか、完全に恋人同士って感じだよね」
隣の九紅璃も、大方意見は同じようだった。
凜音ちゃんは何も言わない代わりに、凄く羨ましそうな目をしている。
あのロリコンめ、黒枝撫でただけでニヤニヤしやがって。そんな暇あったら実妹を襲うくらいしてほしいものだ。うん。切に。
最初のコメントを投稿しよう!