凛として黒羽

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じゃあ、と黒枝はその口を動かした。 「鈴斗ラバーズに加えてほしい」 ラバーズってアレ、だよな。 恋人。いや、複数形だから恋人たち、か。 ……で、誰を加えると? 昼間、愛実が言っていた事を思い出す。 ――あたしとすーちゃんでしょ?これで二股。それから、凜音ちゃん。これで三股。あ、九紅璃と黒枝ちゃんも?五股なの? あながちそうなってしまいそうで怖い。先見の明でもありそうだ。もう少し良い感じの未来を予測してくれるとありがたいのだが。 「黒枝がいいなら、いいけど……」 煮え切らないなあ、俺。ここぞというところで優柔不断を発揮しちゃうんだもんなあ。 「これで合法的に性交が可能」 「結局そこに帰結するのかよ!」 何それ、身体目当てみたいでぞっとしない。まあ、黒枝はそんな娘じゃないけれど。 「というのは冗談で、実際のところあまり要求はない」 「相変わらず分かりにくい冗談だなあ。ん、了解した」 黒枝の頭に手をあてがう。髪の毛の流れに従って、手を下ろしていく。 「ふにゅう……」 気持ち良さそうにする声が聞こえた。 一番下まで行ったら、頭に戻ってもう一回。もう一回。 ふと思うのだが、どうして女の子という生き物は良い匂いがするのだろうか。たまに人間かどうか疑いたくなる。まあ、今目の前に座っている女の子は人間ではないのだけれど。 なでなで。 「うにゃあ……にゅ」 背中からもたれかかり、完全に脱力。そんな仕草も可愛らしい。さすが、クーデレロリータ美少女は何やらせても様になる。 撫でるたび、その耳はこそばゆそうにぴこぴこと動き、尻尾はしなやかにちょろちょろと振れる。 「気持ち良いか?」 「ん」 たったそれだけの返事だけど。 「そっか」 俺を安心させてくれるには充分過ぎた。 にゃーごろごろと喉を鳴らす黒枝。ああ癒やされるなあ。 黒枝の為、だったけれど。そういう約束、だったけれど。 案外。 俺が一番得してるのかもしれない。 「何あれ、良い雰囲気過ぎるんだけど」 ドアの隙間から部屋の様子を覗き見つつ、私は不満を呟いた。 「何というか、完全に恋人同士って感じだよね」 隣の九紅璃も、大方意見は同じようだった。 凜音ちゃんは何も言わない代わりに、凄く羨ましそうな目をしている。 あのロリコンめ、黒枝撫でただけでニヤニヤしやがって。そんな暇あったら実妹を襲うくらいしてほしいものだ。うん。切に。
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