1371人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ、もしかして、あたしだけ鈴斗といちゃいちゃ出来る建て前がない?」
妖狐はそんな事を口にした。
「しなくていいから」
勿論、これは本音の本音である。
これ以上お兄ちゃんにいちゃいちゃ成分が増える?ハッ、笑わせてくれる。
ふざけるなと言いたい。
「最近の義妹はうるさいなあ」
「だから義妹じゃない!その席は誰にも譲らないから!」
九紅璃も九紅璃で、義妹義妹うるさいよ。あいちゃんじゃないんだから。いや、たとえあいちゃんでも譲らないんだけどね。
とうとう耐えきれなくなったのか、凜音ちゃんは苦悶の声を漏らした。
「鈴斗様ぁ……」
「はいそこ、物足りなさげな顔して下腹部に手を伸ばさない」
凜音ちゃんもか。凜音ちゃんも、こっちの世界の住人なのか。全然清純派じゃないじゃん。
悦に入りかけてる凜音ちゃんはさておき、私は再びいちゃいちゃカップル(不本意)に目を向ける。
お兄ちゃんが撫でる手を止めた。
お兄ちゃんに背中を預けてた黒枝が身体ごと向き直った。
対面座位った。対面座位ったって何だ。対面座位るの過去形か。対面座位る、どこかのダンスボーカルユニットみたいだな。
そして二人はちゅーした。
は?何やってんの?おい兄、何やってんの?
彼女であるあいちゃんや実妹である私を差し置いて、なにクーデレロリータとちゅーなんかしちゃってんの?
私はふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなくて。
「あ、もしもしあいちゃん?今お兄ちゃんが黒枝とキスした」
ついついあいちゃんに近況報告しちゃったっ、てへ。
『うん分かった。三秒でそっちに行くね』
プツン。何やらトンデモ発言を残して一方的に切られてしまった。まあ、あいちゃんは家だし、まさか本当に――
「で、すーちゃん。これどういう事?」
「――来ちゃったんだー」
私はもう驚かなかった。
いや、内心は凄く驚いてるけど、無駄に冷静さをアピールしてるだけ。
「実は、あたしなりに特訓をし始めてね。この力も大分馴染んできたところ」
「何で馴染むんだろう」
これは素で不思議だ。
あいちゃんは、遺伝上そういう事とは縁遠い。先天的な能力もない。
つまり。
後天的な才能なのだ。
良くも悪くも一般人の作りをしているあいちゃんに、怪異が馴染む訳ないのだが、どうしてだろうあいちゃんなら何でもアリな気がしてきた。
戦わせるのは忍びないけど、正直かなりの戦力になると予想される。
最初のコメントを投稿しよう!