凛として黒羽

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「あれ、もしかして、あたしだけ鈴斗といちゃいちゃ出来る建て前がない?」 妖狐はそんな事を口にした。 「しなくていいから」 勿論、これは本音の本音である。 これ以上お兄ちゃんにいちゃいちゃ成分が増える?ハッ、笑わせてくれる。 ふざけるなと言いたい。 「最近の義妹はうるさいなあ」 「だから義妹じゃない!その席は誰にも譲らないから!」 九紅璃も九紅璃で、義妹義妹うるさいよ。あいちゃんじゃないんだから。いや、たとえあいちゃんでも譲らないんだけどね。 とうとう耐えきれなくなったのか、凜音ちゃんは苦悶の声を漏らした。 「鈴斗様ぁ……」 「はいそこ、物足りなさげな顔して下腹部に手を伸ばさない」 凜音ちゃんもか。凜音ちゃんも、こっちの世界の住人なのか。全然清純派じゃないじゃん。 悦に入りかけてる凜音ちゃんはさておき、私は再びいちゃいちゃカップル(不本意)に目を向ける。 お兄ちゃんが撫でる手を止めた。 お兄ちゃんに背中を預けてた黒枝が身体ごと向き直った。 対面座位った。対面座位ったって何だ。対面座位るの過去形か。対面座位る、どこかのダンスボーカルユニットみたいだな。 そして二人はちゅーした。 は?何やってんの?おい兄、何やってんの? 彼女であるあいちゃんや実妹である私を差し置いて、なにクーデレロリータとちゅーなんかしちゃってんの? 私はふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなくて。 「あ、もしもしあいちゃん?今お兄ちゃんが黒枝とキスした」 ついついあいちゃんに近況報告しちゃったっ、てへ。 『うん分かった。三秒でそっちに行くね』 プツン。何やらトンデモ発言を残して一方的に切られてしまった。まあ、あいちゃんは家だし、まさか本当に―― 「で、すーちゃん。これどういう事?」 「――来ちゃったんだー」 私はもう驚かなかった。 いや、内心は凄く驚いてるけど、無駄に冷静さをアピールしてるだけ。 「実は、あたしなりに特訓をし始めてね。この力も大分馴染んできたところ」 「何で馴染むんだろう」 これは素で不思議だ。 あいちゃんは、遺伝上そういう事とは縁遠い。先天的な能力もない。 つまり。 後天的な才能なのだ。 良くも悪くも一般人の作りをしているあいちゃんに、怪異が馴染む訳ないのだが、どうしてだろうあいちゃんなら何でもアリな気がしてきた。 戦わせるのは忍びないけど、正直かなりの戦力になると予想される。
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